シズちゃん。

君の行動は愛の其れに似ているよ。












○愛のかたち■












深夜の池袋。
相変わらず人に溢れた此の街は静まることを知らない。遠くで黒バ
イクが嘶いた。彼女が動く予定は把握していない。後で情報を確認
しておこうと、裏路地に突っ伏しているバーテンダーを見ながら細
身の男は思った。

相変わらず此の男の生命力は素晴らしい。およそ人間のものではな
いだろう。だが、それでも彼が人間にカテゴライズされている以上、
観察することは止められない。

今まさに観察されていた男は、手を投げ出していたコンクリートを
思い切り叩きつけ、其れと連動し得ないゆっくりとした動作で起き
上がった。


頭を押さえながらふらふらと歩く。いや、首を痛めたのだろう。体
ごと辺りを見回した。臨也は其れを近くのマンションの非常階段か
ら身を乗り出して見下ろす。うっかり遭遇してしまった静雄から逃
れるために、大通りのトラックを自分を追いかけていた彼目掛けて
誘導して当てた。景気良く吹き飛んだ体はそのまま裏路地へ。そし
て今にも至るのである。顔面から突っ伏した彼を安全に観察する為
に、臨也は五階の非常階段に身を潜めた。


「いぃーざぁーやあぁぁっ…!!」


押し殺した重低音が、池袋の一角で響く。夜の街にサングラスは見
にくくないのだろうか。奇跡的に原型を留めている其れを見ながら
臨也は嘆息した。自分の服装も闇にとけ込みやすい色をしている。
そんな人物を探すのであれば、まずサングラスを外す処から始める
べきで、


「…っ」


考えが中断される。目が合ったのだ。例の如く体ごと周りを見てい
た静雄が上を見上げていた。

いや、
自分を見ていた。

裸眼では瞳が何処を見ているかなど分からない。しかし、確実に彼
は自分を見つけ出していた。静雄の口の端が片側だけゆっくりと上
がる。にやぁ、という擬音がぴったりくるような笑い方だった。

そして呟くのだ。

いざや、と。

彼にとっては夜の闇など関係ないのだ。自分が池袋にいる限り、色
など些細な事なのだ。其れを体現している、人。ぞくぞくと快感に
似た刺激が臨也の背中を駆け抜けた。自分の知り得ない人の可能性
を目の当たりにする。何物にも代え難い刺激。其れを自分にだけ与
える人。


(ああ。是れは既に、愛だ)


今まさに、近くの自販機をこちらに投げつけようとしている静雄を
見ながら、臨也は微笑んだ。



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流行にのっかってみました(え
相思相愛でしかるべきだと思うの、この二人。
だってね。
いつだってお互いのこと考えてるでしょ。
その脳の占拠率ってハンパないよね、って話。


























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