「青年、ごめんね」  


気がついたらレイヴンを殴り飛ばしていた。    











                              体に刻む










前から気になっていたのだ。申し訳ないと言葉を発する彼は、常に
こちらに負い目を感じているように見えた。対等だと思っている関
係だったが、お互いの意識は違った。積もり積もったところにレイ
ヴンの言葉が止めをさしたのだ。  


「オレが本当に嫌だと思ったらとっくにこーしてんだよ」  


ベッドから盛大に転げ落ちたレイヴンは殴られた左頬を押さえなが
ら、目をパチクリさせていた。何故殴られたのか、何故ユーリが怒
っているのか分からない様子だった。 


「でも青年はさ、」
「…分かった、黙れ」  


ユーリ自身も何故こんなにも怒りがこみ上げるのか不思議に感じた。
しかし、どうしたらこれを解決出来るかは、既に体が実行していた。 
態勢を崩し、床に座り込んでいたレイヴンを引っ張り起こす。その
ままの反動でベッドへ転がした。 


「オレが同情や憐れみでこうしてると思ったのかよ」
「…」 


時に無言は雄弁だ。否定をしない口をユーリは塞ぐ。がりっと歯が
ぶつかって血の味が滲んだ。 


「ちょ、青年!?」  


小さな痛みに構っている場合ではなかった。レイヴンの上にユーリ
が覆い被さる。自分がそうされたように、レイヴン自身を扱き上げ
た。ぬめりを利用して、後ろの穴に指を滑り込ませる。ユーリの指
は細く長く、すんなり奥に入った。 


「うっ、あ…」  


思わぬ異物感にレイヴンは短く悲鳴を上げる。とっさに足を閉じよ
うとしたが、ユーリがそこに体をねじ込み叶わなかった。その間に
も指の本数は増える。  


「ユー、リ」
「っ…ん」  


長い髪がユーリの顔を覆い、表情が見えない。痛みに顔を歪めなが
らもレイヴンは息を洩らす男を懸命に見ようとした。ゆっくりと体
内に入る。肉の圧力が強くユーリの額にじっとりと汗が浮かんだ。 


「…痛いだろ」
「いた、ぃ…よ…?」
「こんなこと…あんたが好きじゃなきゃ受け入れるわけねーだろ」  


言葉の最後は掠れてしまう。ユーリは深く息をつきながら、レイヴ
ンの中に体を進めた。男に貫かれるのは初めてだった。男の中に入
るのは初めてだった。お互い頭で理解するのを放棄し、ただひたす
ら相手にしがみつく。  


「体硬ぇな、おっさん」
「…っユーリくんが、柔らかすぎんのよ」  


女性に対する正常位では位置がずれる。当然、体はその分折り曲げ
なくてはいけない。役割が逆の時には出なかった支障に言葉を交わ
す。  


「…っはぁ」
「青年、エロい」
「うっせ」  


強すぎる刺激に顔を上気させたユーリを揶揄する。この状況に先に
慣れたのはレイヴンだった。それでもこちらのリズムで声を上げる
のを見られる。色んな欲が入り混じり、ユーリは口端を上げた。 


「…」
「…なんだよ?」 


視線を感じ、閉じていた瞼を持ち上げた。レイヴンが笑っている。
それが意外で驚いた。 


「ありがとね。大好きよ」 


続けられた言葉にユーリは二度驚く。体は相当の無理をしているの
は分かっていた。経験者だからこそ分かる辛さ。あえて相手をこの
状況に追い込まなければ自分の言いたいことは伝わらないと踏んだ
行動。それをレイヴンは笑みを浮かべて受け入れたのだ。


「…っ、青年?」
「いいから寝てろ」


ユーリは自分のものを引き抜くと、レイヴンの曲げていた足を伸ば
しその上にまたがった。そしてゆっくりと身を沈める。怪訝な顔で
様子を伺っていたレイヴンだったが、下半身に宛がわれた熱で理解
する。


「レイヴン、」
「ん、なに?」
「今度ごめんなんてぬかしたら、さっきの続きすっからな」
「あはは、あ手柔らかに頼むわね」


先ほどとは逆の快楽。ベッドが2人分の重さに軋んだ。2人は高ま
る熱に目を閉じ、それに委ねた。











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レイユリレイっていいですよね。
レイヴンはずっと負い目を感じているんじゃないかと。
死んでしまった仲間とか、正しい道を歩かせられなかったアレクセイとか。
自分を好いてくれる仲間とか、愛してるって言ってくれる人全部。
幸せになるのが悪、みたいな。
だから信じることが出来ないんだよっていう話。

もっとストレートに濡れ場書けよってことですかね!























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