「はい、ちょお増やしてもええと思うんですわ。ええ、ええ…。あ、
  ホンマですかー?頼んますわ、ウサギうちにはおらへんかったし」







                              タクミ入荷







シャッターを開け、プレートはそのまま。店は「closed」と表示さ
れたそれをかけている。その中で、店長シゲは皆の前で新しい仲間
を紹介した。

「…」

「そんな緊張せんでもええよ。まだ今日の開店前やし、挨拶しても
 らおう思うんやけど」
「…タクミです、よろしくお願いします」

シゲより頭一つ分下で、周りを伺うように耳を立てているウサギ科。
色は黒だ。黒く、長い耳がひょこひょうこと動いている。

「オーナーに新しく入荷すること相談したらなぁ、ちょうどええ子
 がおる言うて。即決まったんよ」

シゲが今回の旨を告げた。それを聞いて最初に言葉を発したのはフ
ジシロだった。

「うっわー、うっわー!可愛い、何、誰っ」
「ウサギ科のタクミくんだね。ボクはここでバイトさせて貰ってる
 スガだよ、よろしく」

檻の中で騒ぐフジシロを後目に、スガが爽やかに挨拶をする。言葉
の中でさりげなく説明するのが彼だ。

「こちらのうるさい彼は、犬科のフジシロくん」
「よろしく、タクミ♪」
「あ、よろしく」

さりげな嫌みに気付かずに、フジシロは元気いっぱいに挨拶をする。
そしてその元気な勢いを嫌なものとは受け止めずに、タケミは笑っ
て応えた。

「ネコ科はオレと、タキだけ。オレはツバサ。ナルミに気をつけろ
 よ」
「え?」
「タクミくんの檻はフジシロくんとナルミの間なんです」
「…はあ」

ツバサとタキの挨拶を聞いて、タクミは首を傾げた。何に気をつけ
るのか分からないようだ。からかうようにシゲが付け足した。

「襲われそうになったらちゃんと叫ぶんやで」
「え」

それにまともに驚いてタクミはナルミの方向からざっと後ずさる。
表情はおびえている。

「おいコラ、それどーゆー意味だよっ!」
「そのままの意味なんですか…?」

誰よりも早くつっこんだのはタクミだった。頭の回転は速いらしい。
彼の頭の中での位置は決まったようだ。

「まぁ、そーやなぁ?ツバサ」
「こっちにふらないでよ」

その点に関しての経験者であるツバサに話をふったシゲに、いまい
ましげにはねつけるツバサ。やはりいい思い出はないらしい。

「危なくなったらオレが助けるからね、タクミ!」
「でも無償と言うのもなんですねぇ」

その様子を見ていたフジシロが妙な正義感を出して意気込んでいる。
それに便乗してスガはまた違ったことを言い出している始末。一人
新入りが来ただけでこの騒ぎ。シゲは内心不安を感じていた。















→ネズミ









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